祖父譲りのあやかしを見る能力を持つ大学二年生の女子。
幼い頃、母親に置き去りにされて、飢えで果てようとしたところをあやかしに救われた。その経験から、お腹を空かせているものは人でもあやかしでも放ってはおけない。
料理が得意で、真っ直ぐな女の子。
鬼門の地である天神屋を治める、鬼神(きじん)の大旦那。
長い時を生きている大妖怪で、かくりよを治める八葉の一角を担う。
従業員曰く、冷徹で残忍かつ懐が深い御方だというが、品のある所作で飄々としており本心は見せようとしない。数十年前に史郎とある契約を交わしたようだが……。
天神屋の招き狐とも呼ばれており、若旦那を務めている、九尾の狐。
端正な見た目に、物腰は柔らかで、仕事もできる。非の打ちどころがなくあらゆる部署から頼りにされている。
変化の術を得意とし、九つの姿を使い分けることができる。
天神屋の番頭を務める、土蜘蛛。
少々頭に血が上りやすく荒っぽい口調や振る舞いを見せるが、何事にも真面目に向き合う頑張り屋で世話焼き。大旦那を慕っており、妹にはかなり弱い。
最年少で幹部になった有望株でもある。
天神屋の若女将を務める雪女。
高飛車な物言いと振る舞いをしているが、子供のような我儘を言う一面も。
役職の手前、容姿には気を配っているが、見かけによらず大食漢。
大旦那を慕いながら、玉の輿を狙っている。
天神屋でも重鎮と呼ばれている古株で、宿の懐事情の一切を取り仕切るお帳場の長。
非常に博識で厳格。元々は妖都の宮中に仕えていたり、八葉の中にも世話になった者がいるなど、頭があがらないものも多い。
見込みの無いものは切り捨て、可能性には投資する主義。
天神屋の仲居の一人で、化け狸。
とても明るくて、事情通。様々なことに興味を持ち、人間である葵にも気さくに話しかける。
驚いたりすると、元の子狸の姿になってしまうことも。静奈とは同室。
天神屋の庭掃除から曲者退治、護衛まで行う、お庭番のカマイタチ。
中学生ぐらいの見掛けだが、年齢は葵よりもかなり年上。
語尾に「ござる」を付けるのが一族の決まりのようだが、たまに忘れることも。
温泉の泉質や浴場の管理などを担う、濡れ女。天神屋の女湯の湯守りを務めている。
人見知りで臆病な性格だが、いざという時には思いがけない力を発揮することも。
春日とは同室だが片付けは苦手で、いつも部屋の掃除を手伝ってもらっている。
天神屋の下足番長を務める、化け狸。
常に人当たりの良い愛嬌のある笑みを浮かべており、どことなく軽い雰囲気を漂わせている。
密かに仲居達からの人気は高いようで、どうやら春日の親戚らしい。
お宿の地下施設を総括する責任者でもある開発部長である、千年土竜の博士。
天神屋創設当初からいるメンバーの一人で、めったに地上に出てくることは無い。
研究開発には非常に熱心で、寝食を忘れることもあるらしい。
自称、葵の眷属。
手鞠程の大きさで、ぷにぷにした愛らしい見た目の河童。
群れを成して生活する、無害代表のひ弱なあやかし。チビはその中でも一際小さく、現世にいたころはよく食料争奪戦に負けていた。葵に付いてかくりよへやって来る。
元々は大旦那の鬼火。
ガラスの玉のペンダントの中で、力を失い弱りきっていたはずが、葵の霊力によって育てられ、再び鬼火としての力を取り戻した。
葵の眷属となってからは、自ら丸い火の玉となり道を照らしたり、葵の姿に化けられる。
まるで幼い子供の様にピュアで、いろんな人に抱きつくこともある。
折尾屋の旦那頭を務め、獣王乱丸と名高い狛犬。
南の八葉であり、この地を守る神獣の片割れでもある。
雄々しく荒々しい性格だが、折尾屋と南の地を一途に愛して発展に努めており、住民や従業員たちから大きな尊敬の念を抱かれている。
折尾屋の番頭を務める天狗。元・天神屋の番頭でもある。
朱門山の松葉の三男坊で、現在勘当中の身。
ちゃらんぽらんで適当な性格に見えるが、番頭としてはなかなかのキレ者。
愛嬌のある応対でお客たちに好かれている。天神屋の大旦那とは昔からの碁打ち仲間。
折尾屋の筆頭湯守。妖火の中で最高位の不知火というあやかし。
かつて湯脈の調査をしていた際に、幼い頃の静奈と出会い、湯守の才能を見出して引き取った、彼女の育ての親にして師匠。
邪鬼の爪によって負った額の傷から、常に妖火が漏れている。
折尾屋の若旦那を務める、二本の尾を持つ化け猿。
かつては町で有名な悪ガキだったが、その身のこなしや子分をまとめる力を買われ、折尾屋で働くよう乱丸に勧誘された。
ねねとは幼馴染で、実家はお隣さん。
少々暑苦しい性格だが、恩義のある乱丸のために努力を惜しまない働き者。
折尾屋の若女将を務める、火鼠のあやかし。
若女将ぶろうとして強気な態度をとりがちだが、本当は真面目で素直な性格である。
気分が落ち込むと小さい鼠の姿になってしまい、なかなか戻れなくない。
好敵手で、憧れでもあるお涼のことは、かなり意識しているようである。
折尾屋に雇われている双子の板前。男の子とも女の子ともつかない淡麗な容姿で、髪が黒い方が、黒鶴童子の戒。
白い方が、白鶴童子の明である。
いつもどことなく眠たそうで、やる気も無さそうなゆる~い感じだが、料理の腕は確かで、妖都の料亭で働いていたこともある。
折尾屋で雑用の下働きをしている、夜雀の男の子。
南の地の貧しい港町で、兄弟姉妹の五人で暮らしている。
乱丸から、南の地についてしっかりと知って働くようにと教えられており、またそんなふうに南の地の発展に尽くす乱丸を尊敬し、慕っている。
葵の前に突如として現れた、金色の髪の座敷童。
儚げな子供という印象だが、大人びた雰囲気もまとう、謎めいた存在。
元・南の地の八葉で、しるべの巫女の異名を持つ神がかり的なあやかし。
時に知る未来予知の警告に従い、愛する南の地を守ってきた。
乱丸と銀次の二匹の神獣を育て、災厄を封じる儀式を担う役割を与えた。
三百年前、儀式に失敗したことで、災厄をその身に引き寄せ亡くなっている。
折尾屋創設時から勤めている大御所で大幹部。看板犬であり、宣伝部長。
折尾屋の従業員からはノブ先輩と呼ばれ、敬われている。
現世で乱丸が出会い、連れて帰ってきた犬で、長い月日を経て送り犬となった。
鳴き声は、バフ。
葵の祖父。故人。
葵と暮らすようになるまで、全国を津々浦々と移動して、現世とかくりよを行き来していた。
あやかしにも名がよく知られており、自由奔放な生き方で関わった者達を翻弄し続けた。人だけでなく、多くのあやかしたちから嫌われ、また慕われてもいた、ある意味で偉大な人物。
八葉の一角を担う、西の地の朱門山に棲む天狗のご隠居。
史郎のことを昔から知っており、破天荒な振る舞いを気に入っていた。
お酒が好きで、泥酔するまで飲むことも。ダルマの板前長に負けず劣らず頑固者。
気まぐれな遊び人と名高い妖都の大貴族。
雷を操るあやかしで、黄金童子と並ぶ四仙の立場である。
南の地の儀式に必要な物を知っており、賓客として折尾屋に迎えられているが、その本心は見えない。
暁の妹で、都で芸妓をしている、女郎蜘蛛。
現世に居た頃、史郎と共に暮らした時期があり、それ以来彼を慕っている。
かくりよに来てからは、天神屋で仲居の仕事をしていた時もあった。
かくりよの人気作家で、入道坊主というあやかし。妖都新聞にコラムなども連載している。
デビュー作の主人公のモデルが大旦那で、天神屋との付き合いも古い。
原稿が進まない時など、願掛けのように天神屋を訪れては、部屋に籠って原稿を書くという。
妖王家に出自を持つ宮中のあやかしで、奥方に人間である律子を迎えた貴族。
読書家で現世の文化に興味もあり、時折遊びに行っていた。
結婚記念日には妖都から出かけ、二人で静かに祝いの席を設ける程、奥方を大事にしている。
隠世に嫁いできた、人間の女性。
昭和初期の生まれで、長崎出身。女学生時代は福岡に住んでいた。
その頃、本屋で縫ノ陰と出会い、洋食屋でデートを重ねるようになった。
八葉の一角を担う、八幡屋の一反木綿の若様。老舗の反物屋で甘やかされて育ったボンボンで、女好きの馬鹿息子と有名。
鈴蘭にしつこく言い寄り、大金を積んで手に入れようとするほど。
困った時は、直ぐにじいやを頼る。
南の地と南西の地の山間に巨大な貯水ダムを持つ大富豪の娘。雨女のお嬢様。
ワガママ放題で育ち、とても気分屋。すぐ怒るし、すぐ蹴る。
面白いことが好きで、週刊ヨウトを愛読している。天候を操り雨を降らすことができる。
淀子に仕える従者。
お嬢様のワガママに振り回され、良く蹴られているが、その姿はどこか嬉しそう。
松葉の妻であり、葉鳥の母である、鷺のあやかし。
大人しく清楚な良家のお嬢様で、控えめに微笑む綺麗な人であった。
心配性で、心優しく、病気がち。ずっと昔に病に臥して亡くなっている。